「お母さんの味方でいたい」私たちも母だからママほぐ代表 高村えりこさん

茅ヶ崎市在住。小学2年生の長女と保育園の年長さんの長男と、夫の4人家族。2016年よりママの心と体をほぐせるママの居場所を運営する『ママほぐ』を設立し、8年間代表を務めてきた。 また、2021年から『茅ヶ崎あたりのお母さんの居場所マップ』というウェブサイトを運営し、親子が楽しめる様々な場所やイベントを紹介している。また、個人で親子連れで訪れることのできる子育てママの身体ケアルーム『おきなわ屋ぁ』の代表でセラピストとしてもある。

ママほぐとの出会い

Instagramに流れてきたポストでママほぐを初めて知ったのは、坊がまだ2ヶ月か3ヶ月くらいの頃だったと思う。
その頃の坊は今では考えられないくらい便秘に悩まされていて、日々「うーーーん」とうなり声が響いていた。生まれて間もない赤ちゃんがこんなうなり声をあげるものなのか?と驚きつつ、私はどうしたものかと思いながら、綿棒でこちょこちょやったり、お腹をさすってみたり。
まだフニャフニャでホワホワの坊を抱きかかえながら、今の自分のお世話ひとつが、今後の坊の成長に重大な関わりがあるのではないかと思えてきて、良さそうな情報を求めていたのだ。

産後なかなか外に出る機会が無かったが、意を決して参加したのがママほぐが運営する『産後カフェ』だった。

藤本きよみさんという薬剤師の方が、子どものツボを教えてくださるということで参加してみたのだ。藤本さんは赤ちゃんの手のひらにある便秘によく効くツボや、落ち着かずに泣いている時に良いツボ、風邪の時に肺をすっきりさせるツボなどを教えてくれた。

薬剤師の藤本きよみさん(写真左)
参加者の方の息子さんに可愛がってもらいご機嫌の坊

全然知らなかった情報を知れたことにまずは安心したのと、ママほぐの運営をされている先輩お母さんたちが、優しく話を聞いてくれたことが嬉しかった。

その頃せっせと教えて貰ったツボを日々押していたことが功を奏したのか、あの頃の便秘が嘘のように、1歳になった今はうらやましい程の快便である。

ママほぐ開催の様子

ママほぐは、子育てに関わる色々な専門職の方にお話を聞いたり相談ができる『ママほぐー産後カフェー』と、ママの居場所を目的とした『ママほぐーリラクゼーションとモノづくりー』をそれぞれ月に1回開催していて、その後もちょこちょこお邪魔するようになった。

ドライフラワーを使ったリース作りやドライロミロミなどのリラクゼーション
子どもと一緒に手形足形アート
見守り保育のスペースもあり、子どもを遊ばせながらリラクゼーションやモノづくりを体験できる

定期的に子ども服のリユース会も開催されている。300円で子ども服が詰め放題!『〜放題』に目がない私としてはとてもありがたく、楽しませて貰っている。

子ども服リユース会の様子

『お母さんのために』活動を続けているママほぐは、なんと今年で8年目になるのだという。8年間も毎月イベントを開催しつづけてこられるなんて、すごい。すごすぎる。

ママほぐを作って代表を務めてこられた「高村えり子さん」は、きっととってもカリスマな人なんだろう・・・と、勝手なイメージをさせていただきつつ、一体どんな風に8年間続けてくることが出来たのか、お話を伺ってみたいと思ったのだ。

8年も続いてきたママほぐ、代表の高村えり子さんはどんな人?


ママほぐ代表の高村さんは、セラピストでもある。
『ママほぐーリラクゼーションとモノづくりー』では、高村さんの施術コーナーもある。
せっかくなので、高村さんの施術を受けてみたいと、取材の前に20分のマッサージを予約した。
高村さんの施術はとても温かかった。
腰痛持ちの私は度々整体にも行っているのだが、それとはまた違う、なんとも言えない手のひらの温かさがじんわり感じられて、オキシトシンなるものがいっぱい放出されているような、とても幸せな気持ちになった。

高村さんは私が想像していた、カリスマでテキパキパキパキなイメージとは少し違う感じだった。
ちょっと予想外だったこともあり、矢継ぎ早に訳の分からない質問をしてみる。

「えっと・・高村さんの好きな言葉とかあるんですか?」
「えーないです~!」

「ざ、座右の銘的なのとかは・・・?」
「えええ!うーん、ないです~笑」

焦ってきた私は、一番聞いてみたかったことを唐突に聞いてしまった。

「あの、、、なんで8年も続けて来られたんだと思います??」
「えー!わかんないです~!!笑」

高村さんは、私の予想に反してとてもふんわりしていた。予想以上に大ふんわり。
でも、それがきっと、どんな人でも優しく包み込むような包容力になっているんだろうなぁと思った。
そして、その気取らなさが、高村さんと何かしたらおもしろそう!高村さんのいう事なら…とたくさんの人を巻き込んでこられる秘訣なのだと直感した。

高村さんがママほぐを始めた理由

岩手県出身の高村さん。静岡の大学でDNAの研究をした後、サーフィンが好きで沖縄のサーフショップに務める。
そして婚約していた旦那さんと、茅ヶ崎で暮らすことを決めて移住。
茅ヶ崎は、海が好きだった高村さんの希望もあって選んだ地だった。
そして、茅ヶ崎暮らしを始めて間もなく長女を出産。
しかし、病院から帰ってきた後の子育てには孤独を感じたという。

沖縄にいた頃の高村さん

「わたし、結構アクティブな方だと思ってたんです。大学時代はとにかくバイトしてお金貯めて海に行くみたいな生活でしたし。
でも、子どもを産んで病院から帰ってきて、崩れてしまった感じで。全然友達もいなくて、子育てを相談できる相手も居なくて

気分転換にコーヒーを飲みにカフェに入っても、子どもが泣き始めると出なければいけなかったりして、物理的にも精神的にも居場所がないと感じていた。

「このまま家にいたら鬱になってやばいと思って、生後半年してようやく出産した病院のベビーマッサージに行ったんですよ。そこで知り合ったお母さんに初めて“私今こんな感じで辛いんだよね”って話してみたら、“私もそうだよ”って言われて。自分だけかと思っていたら、自分だけじゃ無いんだって。そういうのを知った瞬間にもう、ものすごいね。安心感と。別に問題が解決しているわけじゃないんだけど、自分だけじゃ無い、味方がいるんだって

初めてママ友が出来た高村さん。
その経験を経て、ママたちの居場所を作りたいと強く思うようになったという。
そこで、その思いを初めて出来たママ友に打ち明けると、同じ思いをしているお母さんたちを紹介してくれることに。
そうして、思いを同じにした母達があつまり、長女が1歳になる頃に初めて「ママほぐ」を開催するに至った。

「実は、ママほぐは1度解散しているんです」

「初めのママほぐは、リラクゼーションのブースだけだったんです。とにかくママをほぐそうということで(笑)お母さんが元気じゃ無いと子育てがうまくいかないというか、楽しく出来ないっていうことが自分たちの体感としてあったので、とにかくまずはお母さんを元気にしようってことで」

ママほぐの由来は、ずばりママをほぐそう。

「ダサい方が良いよねって。気軽に行けるじゃないですか。なんならパジャマできても良いよくらいな勢いのほうがいいよねって」

初めてママほぐを開催した時の様子

こうして最初は、3つのリラクゼーションブースからはじまったというママほぐ。
しかし、それぞれ乳幼児を抱えながらのミーティングとイベントの実施は大変だったという。

「自分たちの子どもをほっといて打ち合わせとかしていて、もう本末転倒だよね。それで、ママほぐは1度解散しているんです」
活動をはじめて3ヶ月〜4ヶ月くらいで一度解散。しかし、高村さんの思いは途切れることはなかった。

絶対に必要と思っていたから

活動をはじめて、一度は解散したというママほぐ。
「でも、絶対、絶対にこの場所は必要だと思っていたから」という高村さん。
3ヶ月の休止期間を経て、やはりやろう!と動き始めた。
その時、初期メンバーの中で残ったのが、今も活動を共にしている古知屋(こちや)さんだ。

現在もママほぐのスタッフとして見守り保育を担当している保育士の古知屋千恵子さん

「頻度を、3ヶ月に1回とかにしようかっていう話も出たんですけど、それじゃあ居場所じゃないよねと。月に1回だったら、来てくれたお母さんたちとその子どもの育ちを一緒に分かち合えるというか。久しぶりだね、元気だった?とか言い合える最低の頻度が月に1回だねって」

活動再開にあたり、クラフトも出店に加えることに。
高村さんの『ママが夢中になって何かをやれる時間も大切』という考えからだった。
そこで編み物の出店をしていた赤池亜希子さんと、古知屋さんのママ友だった中村麻紀さんも運営メンバーに加わり、現在の運営体制となった。

ママほぐの運営メンバーと子どもたち。全員が現役のママでもある。

高村さん以外は、みんな保育士免許を取得しており、ママたちがクラフトやマッサージなどをしている間、子どもは運営メンバーや保育ボランティアさんが中心となって見守り保育をしている。
更に、出店者も子連れの場合が多く、出店者の子ども達も一緒に保育。
出店者も時間に余裕がある時は保育に携わり、みんなで子育てをしながら楽しめる場所となっている。

「本当にみんなで子育てをわかり合えるというか、応援し合える場になっているなって。
子育てに手こずってる時って、自分の子どもを可愛いって思えないわけですよ。わたしはそうだったんですよ。

だからその時に“赤ちゃん可愛いね”って、声をかけてもらえるだけで、“うちの子かわいいんだ”って思えて。それが、自信になったりして」

こうして、お母さんたちがリラクゼーションやモノづくりができるイベントとして月に1度のママほぐは開催され、その後、11ヶ月までの赤ちゃんとお母さんを対象にした『産後カフェ』も始めることに。

「長男が、予定日よりも早くに産まれてきたので、毎月検診があって医療者と繋がっていられることがすごく安心だったんです。お母さんが専門職に繋がれる場があった方が良いなと思って」

産後カフェは、赤ちゃんを育てていく上で知りたい悩みを、様々な専門職の人に相談出来る場だ。離乳食の相談や、抱っことおんぶについて、産後ヨガ・ベビーヨガ、夜泣きや寝かしつけの相談など。
毎月様々な専門家が講師となり、お母さん達の相談にのってきた。

そんな産後カフェ。実は、2025年3月で終了予定だという。
5年間、そこは支援者が母達に何かを教えるというだけではなく、一緒に考えて悩んでくれる、そんな場所だったのでは無いかと思う。その存在に助けられたのはきっとわたしだけではないはずだ。

改めて…8年間、続けてこられた訳は?

ママほぐは、確かに素晴らしい場所だ。しかし、8年も続けてこれるというのは並大抵の話ではないと思う(しつこい)。
どうして8年も続けて来れたのか・・・?
どうしても聞いてみたかったので、再び聞いてみると。


「………ほんとうに、特にないんです。(笑)でもね、確かに自分も子どもを産んだばかりの頃とか、しんどい時はあったんですけど。2人目3人目産んだお母さんがまた、戻ってきてくれる。また来たいと思ってましたって言ってくれると、嬉しいです。本当に」

と、満面の笑顔で答えてくれた。
同じ質問を、8年間一緒に活動を続けてこられた保育士の古知屋千恵子さんにも聞いてみた。


「えりちゃんは、初めて会う人にすっと入っていけるんです。いつもお母さんたちを良くしたいっていう熱い思いを持っていて…あとはすごく持ち上げ上手なんです。千恵子にしかできないよ!って言われると、、(笑)」

子育てをする前は保育士として働いていたという古知屋さん。古知屋さんたちが、子ども達をみてくれているおかげで、お母さんたちは少しの間子どもを離れてリラクゼーションを受けたり、ワークショップを楽しむことができる。
古知屋さんにとっても毎月、子ども達に会えるのは楽しみだという。

「なんていうか、保育士としてまだ自分にも需要があったんだみたいな(笑)」
そう話す古知屋さんの笑顔も、とても素敵だ。
お母さん達にとっても、子育てを経験している先輩母と話す時間は息抜きの貴重な時間になっているに違いない。


同じく、保育を担当している赤池亜希子さん。なんとご自身も5人のお子さんのママ。
「自分が子育てをしてきた中でたくさん助けて貰ったので。子ども達が成長した今、自分にできることで恩返しができたらという気持ちなんです」と話してくれた。

ママほぐの運営スタッフのみなさんは、とても楽しそうだ。
楽しそうなのは、スタッフだけではなく出店者のみなさんも。
そして多くが、子育て中のママたちだ。


去年からママほぐで出店をしているという、さおさん。
自身も双子の子ども達を育てながら、ママほぐの出店者として子どもの手形や足形をとってキーホルダーをつくるワークショップを開催している。
「こういう場所があって、本当に助かってます。たくさんのお母さん達と知り合える場所になっているので。ありがたいですよね」と話してくれた。

今の夢は「お母さん食堂」

取材中、高村さんは何度も「お母さん達のために」という言葉を口にしていた。
その熱い思いが周りの人に伝わり、ママほぐという場所が続いている理由なのだと思う。
次に何かやりたいことはあるんですか?と尋ねてみた。

すると、「お母さん食堂をね、やりたいの!」と即答。
お母さん達が、子どもから少し離れてゆっくりご飯を食べられる食堂をつくりたいと言う。
なるほど、それはとってもありがたいし、私も是非行きたいです・・・!
なんて話していたら、
「そうだよね!!ほら、meguさんも仲間ですから」
とあっという間に、輪に入っていた。
嬉しい気持ちと、なるほど、これが高村さんの魅力なんだなぁと思った。
「お母さんのために」その強い思いをもって、突き進んでいる高村さん。
その強い思いが、いったい何人のお母さんを元気にしてきただろう。
きっと高村さんたちが知らないところで、救われているお母さんも多いだろう。

強い思いは、まだ見ぬ誰かの少しの幸せや救いになる。
高村さんの思いを私も陰ながら応援させていただきつつ、時には是非引き込まれさせていただきたいと思う。

関連記事

  1. お母さんがホッと一息できる場所をつくりたい